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■第十三回■コーポレート・ガバナンスに関するトピックス(2)【日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット) 専務理事 富永誠一】

2014年02月12日

 コラム写真20140212-2日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)の富永です。

 

前回コラム(1)では「成長戦略とコーポレート・ガバナンス」と題して、政府の成長戦略「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」でコーポレート・ガバナンスに関わる部分を説明させていただきました。

 

すでに、年内に形になったものがありますが、その中で、このサイトに最も関連があると思うのは、「日本版スチュワードシップ・コード」です。

このコードは、上場会社に投資する立場の機関投資家の規範で、日本再興戦略は次のように定義されています。

 

「機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則」。要するに、機関投資家は自身の顧客(真の投資家)の利益を最大化するために、投資先企業と対話を行い、中長期の視点成長を促さなければならない、というものです。

 

昨年8月金融庁に「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」が設置され、8/6、9/18、10/18、11/27、12/26の計5回の会合が持たれて、素案である、「『責任ある機関投資家』の諸原則(案)≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」が公表されました。一カ月間ほどパブリック・コメントに付され、現在最終調整段階に入っています。

 

素案では、本場の「英国スチュワードシップ・コード」と同じく7つの原則となっていますが、日本流にアレンジされたものになっています。日本版の7つの原則は以下のとおりです。

 

1.   機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきであ
  る。

2.   機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定
  し、これを公表すべきである。

3.   機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企
  業の状況を的確に把握すべきである。

4.   機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図
  るとともに、問題の改善に努めるべきである。

5.   機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針
  については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなる
  よう工夫すべきである。

6.   機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについ
  て、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。

7.   機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解
  に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべき
  である。

 

※  「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」(最終受益者を含む。)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味します。

 

7番目が日本流で新たに入った原則です。日本では「スチュワードシップ」という言葉に馴染みがないので、こういった原則が入ったものと思われます。

 

また、このコードの目的には、「企業の側においては、経営の基本方針や業務執行に関する意思決定を行う取締役会が、経営陣による執行を適切に監督しつつ、適切なガバナンス機能を発揮することにより、企業価値の向上を図る責務を有している。企業側のこうした責務と本コードに定める機関投資家の責務とは、いわば『車の両輪』であり」と書かれています。

 

これは上場会社のコーポレート・ガバナンスの話です。スチュワードシップ・コード、つまり機関投資家の責任と上場会社のガバナンス構築の責任は「車の両輪」であるとされています。これは本稿(1)で筆者が指摘したことと重なります。

 

IPOを目指される企業の皆様は、これを読んでどう思われるでしょうか?

IPOを実現することは、一般株主を招き入れることを意味します。一般株主というと個人株主を想像するかもしれませんが、投資のプロで、企業の成長の果実をともに分け合いたい機関投資家が株主になることも十分にありえるわけです。

上場会社が自ら構築しなければならないコーポレート・ガバナンスの表裏一体の存在に投資家側の責任が定められていることを意識していただきたいと思います。

 

日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)でも「日本版スチュワードシップ・コード」についての意見書を出しましたので、ご関心のある方はホームページ(http://www.cg-net.jp/)をご参照ください。

 

日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット) 専務理事 富永誠一

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