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■第十五回■コーポレート・ガバナンスに関するトピックス(3)【日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット) 専務理事 富永誠一】

2014年05月01日

コラム写真20140501日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)の富永です。今回は上場ルール改正の話をさせてください。


今年2月に東京証券取引所の上場ルール(有価証券上場規程)が改正され、上場会社は、「取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない(第445条の4)」となりました。これは、会社法改正についての法制審議会の附帯決議で東証に求められていたものです。昨年11月29日にパブリックコメントに付され、2月10日から施行されています。付帯決議の対応ですので、パブコメで大きな変更は想定されず、そのまま確定した形になります。


今回の改正は、平たく言えば、「独立社外取締役確保の努力義務」です。いわゆる形式上の義務付けではありません。独立社外取締役の確保についての努力義務が課されているものであって、その結果、独立社外取締役が見つけられなかったからと言って罰則はありません。


改正前は「独立役員に取締役会における議決権を有している者が含まれていることの意義を踏まえ、独立役員を確保するよう努めるものとする。」でしたので、表現が強まっています。独立役員は、社外取締役もしくは社外監査役の中から指定することが求められていますが、取締役会の議決権を有するのは取締役ですから、社外監査役だけでは不十分だと暗に言っているようなものです。しかし、社外取締役の義務化には根強い反対論もあることから、それに配慮した表現になっていました。その表現が強まったことになります。


東証の上場ルールだけでなく、現在、国会で審議されている会社法の改正、コーポレート・ガバナンスを重視する機関投資家による独立社外取締役を求める声、トヨタ自動車、キヤノン、新日鐵住金といった社外取締役の導入に消極的だった企業の相次ぐ導入で、これから社外取締役がいない上場会社は肩身の狭い思いをすることになると思われます。独立社外取締役の選任をはじめとするコーポレート・ガバナンスの体制整備は上場会社の責任です。これからIPOをしようとする企業の皆様は、コーポレート・ガバナンス強化の流れをとらえて、建設的に体制を強化していって欲しいと思います。


なお、上場ルール改正に至るパブコメには、個人、法人から6件のコメントが寄せられています。日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)でも意見書を提出しています。その基本的な内容は、今回の改正は独立社外取締役1名以上の努力義務になっていますが、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上の観点からは、独立社外取締役の複数義務付けが必要なので、今回の改正は評価もできるが、不十分な点もあるという内容です。詳細は、CGネットのホームページ(http://www.cg-net.jp/)に掲載していますのでご参照いただければと思いますが、東証がコメントをまとめた文書には、CGネットの意見のうち、次の内容が掲載されています。CGネットとしては、日本コーポレート・ガバナンス向上のために貢献するNPOとして、東証には、上場会社のさらなるコーポレート・ガバナンス強化のための努力を続けて欲しいと願います。


【CGネットのコメント】

東京証券取引所においては、内外からのコーポレート・ガバナンス向上の要請に応えるため、今回の改正に留まることなく、将来の「複数の独立社外取締役の義務付け」に向けて、関係各所と協議を続けて実現していただきたい。また、定期的な独立役員(独立社外取締役)の集計結果の公表、独立社外取締役に焦点を当てた「独立役員セミナー」の開催など、独立社外取締役についての情報発信の充実を期待したい。


日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット) 専務理事 富永誠一

 

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