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■第十六回■コーポレート・ガバナンスに関するトピックス(4) 【日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット) 専務理事 富永誠一】

2014年10月10日

コラム日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)の富永です。今回は会社法改正と社外取締役について話をさせてください。

 

会社法改正は、2010年4月~2012年8月に法制審議会会社法制部会で審議されてきましたが、その後政治が絡んで要綱案が若干変更され、今年の4月25日に衆議院、6月20日参議院で可決、成立しました。公布日は6月27日、施行日は公布日から1年6ヵ月を超えない範囲内の政令で定める日とされています。

 

狭義のコーポレート・ガバナンス関連では、以下の5つがあげられると思います。

① 監査等委員会設置会社制度の創設

② 社外取締役・社外監査役の社外性要件の見直し

③ 社外取締役を置いていない場合の理由の開示

④ 会計監査人の選任に関する議案の内容の決定

⑤ 現行「委員会設置会社」が「指名委員会等設置会社」に名称変更。施行後は「監査役会設置会社(現行)」、「監査等委員会設置会社(新設)」、「指名委員会等設置会社(現行、委員会設置会社から名称変更)」の三つの経営機構から選択を行う

 

ここで最もインパクトが大きいのは、やはり③の「社外取締役を置いていない場合の理由の開示」でしょう。

この「置いてない場合の理由」というのは、単に「置いてない理由」ではありません。「置くことによるデメリットの理由」です。それを株主総会で説明しなければならないのです。

 

社外取締役の本来の意味を考えてみましょう。所有と経営が分離している上場会社では、株主が自ら経営に参加することはできないので、株主総会で取締役を選任し、取締役会を構成して、社長(代表取締役)を選出すると同時に、その社長がきちんと株主価値の向上、既存防止を行っているか監督することが求められます。社長に引き上げられた社内の取締役では、監督については立場上あまり期待できないので、社内出身でない、しがらみのない社外取締役に監督の役割が期待されることになります。

 

つまり、社外取締役は株主に代わって社長を監督することが求められるわけですが、そうなると「置くことによるデメリットの理由」を株主総会で堂々と説明することはとても難しいのではないでしょうか?要するに、「株主目線の監督者を置くことはデメリットがある」と株主に対して説明することに等しくなります。これが会社法改正による「事実上の

社外取締役の義務付け」と言われているゆえんです。

 

もちろん、株主といってもコーポレート・ガバナンスに関心を持っている株主ばかりではありません。しかし、上に述べたようなことを丁寧に説明すれば、社外取締役の役割は不要だと考える株主はいないのではないでしょうか?

 

すでにこのコラムで説明したとおり(トピックスの3回)、今年2月に東京証券取引所の上場ルールで「独立社外取締役確保の努力義務」が定められ、各上場会社が取り組んでいます。そのこともあり、東証一部上場会社の社外取締役の導入率は74.3%と、昨年から一気に12%アップしました。

 

上場会社は「株主の期待に応える」ことが責任の大きな一つです。これは言葉を変えると、「少数(一般)株主の保護」です。株主といっても、短期から長期まで、また投資スタイルも様々ですが、いざ、コーポレート・ガバナンスということに関しては、中長期の目線をもった一般株主の代表格である機関投資家の意見について真摯に耳を傾けていくことが必要です。なぜなら、経営者と機関投資家は、企業価値向上、ひいては株主価値向上を目指すという同じ船に乗っていて、客観的に企業を分析しているからです。

 

IPOを目指す皆様にとっては、IPO自体ではなく、その後の成長が目的になるでしょう。将来的には、成長によって得られた企業規模の拡大によって、機関投資家から投資を受けることも視野に入れられているでしょう。そうした皆様にとって役に立つのが社外取締役です。早い段階から中長期の株主の目線をもった社外取締役を置かれた上で、コーポレート・ガバナンスの体制を構築することが、会社の足腰を強くしていくのです。

 

もちろん、社外取締役は誰でもいいというわけではありません。いままで多くの上場会社に対して社外取締役の推薦を行ってきた経験から、社外取締役は「耳の痛いことを言う存在」であるとともに、「企業の成長を後押し」してくれる存在です。そうしたバランス感覚に優れた社外取締役をどのような経路で探していくのか。社外取締役の人選は、大変重要な経営課題と言えるのです。

 

日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット) 専務理事 富永誠一

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