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■第六回■コーポレート・ガバナンスに関するトピックス(1)【特定非営利活動法人日本コーポ―レート・ガバナンス・ネットワーク 理事・事務局長 富永誠一】

2013年10月30日

日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)の富永と申します。

ご縁があり、このコラムに投稿させていただくことになりました。

 

CGネットは、その名前のとおり、日本のコーポレート・ガバナンス推進に貢献するための非営利組織で、2012年1月に「全国社外取締役ネットワーク」、「日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム」、「日本コーポレート・ガバナンス研究所」の三団体が組織統合して生まれました。

 

上場会社の執行部や社外役員、ガバナンスに関心を寄せている方々に対するコーポレート・ガバナンスの啓蒙、教育活動の展開、ガバナンスに関わる情報発信や調査研究、そしてガバナンスの担い手となる社外取締役や社外監査役の人材紹介を行っています。

コーポレート・ガバナンスの最新情報を常にウォッチしていますので、このコラムでは、四半期に一度、コーポレート・ガバナンスに関するトピックスを紹介させていただきます。

 

 

(1)成長戦略とコーポレート・ガバナンス

 

本年(2013年)6月14日に閣議決定された政府の成長戦略「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」の中で、コーポレート・ガバナンスが重要な位置を占めていることをご存知でしょうか?

成長戦略の12ページには、コーポレート・ガバナンスの見直しとして次のような記述があります。

 

(ⅰ)会社法を改正し、外部の視点から、社内のしがらみや利害関係に縛られず監督できる社外取締役の導入を促進する。 【次期国会に提出】

(ⅱ)機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則(日本版スチュワードシップコード)について検討し、取りまとめる。 【年内に取りまとめ】

 

前者が、上場会社の規律で、後者が機関投資家に対する規律です。

上場会社側のガバナンスの構築ももちろん必要ですが、それだけでは完結しません。投資する立場の株主、とりわけ長期目線の機関投資家側にも企業との対話、議決権行使などで上場会社に対してガバナンスを求めていくことが必要になります。

 

まず、上場会社側について、昨年9月に法制審議会で採択された会社法改正では、ガバナンス推進サイドからは社外取締役の義務付けが要請されましたが、そうはなりませんでした。その代りに、社外取締役を導入しない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を開示することと、付帯決議で証券取引所の上場ルールで、独立した立場の社外取締役の導入を促していくことになっています。

 

会社法改正は、政治サイドとの調整に時間がかかり、10月15日に召集された第185回臨時国会で成立することが難しいのではないかとの一部で言われていますが、いずれにしてもガバナンス強化に向けて改正が進んでいくことになります。上場ルールも、東京証券取引所が会社法改正のタイミングにあわせる形で、改正が進んでいくものと思われます。

 

次に、機関投資家側について、本年8月に金融庁が「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」を開始し、年内に報告書をまとめることで検討が進んでいます。

「スチュワードシップ・コード」になじみのない方もいらっしゃると思います。これは元々、イギリスがモデルになっていて、イギリスでは、コーポレート・ガバナンスに関連する規律を定めた「統合規範」がありましたが、金融危機を受けて、2010年には上場会社側は「コーポレート・ガバナンス・コード」、機関投資家側は「スチュワードシップ・コード」と分離されました。上場会社と機関投資家の双方に規律があり、これが両輪としてコーポレート・ガバナンスの実効性確保につなげようという試みです。すでに多くの国でこの「スチュワードシップ・コード」が制定されています。

日本では、産業競争力会議で「日本版スチュワードシップ・コード」が提案されましたが、まだ「コーポレート・ガバナンス・コード」というものは存在しません。車の両輪ですので、今後の大きな課題になっていくと思います。

 

その他、成長戦略では、ガバナンスに関連するものとして、「公的資金等の運用の在り方を検討」、「企業の経営改善や事業再編の促進」、「収益性や経営面での評価の高いインデックスの設定」、「女性の活躍促進(上場会社の女性役員一人登用)」といった項目が並んでおり、順次実現に向けて動き出しています。

 

IPOを目指されるような企業にとっては、狭義のガバナンスである会社機関(社外取締役や監査役等)の問題だけでなく、成長戦略で取り上げられているような大きな視点でガバナンスの問題を捉えて、持続性のある価値創造に向けて事業を推進していただければと思います。

 

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 特定非営利活動法人日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)

               理事・事務局長 富永 誠一

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