LET'S IPO

JBI Inc.

■第八回■Let’s 海外上場 (2) ラオス証券取引所 【DLA Piper 東京オフィス パートナー 弁護士 石川耕治】 1/2

2013年11月07日

IMG_0310② 今回は番外編ということでラオス証券取引所についてお話しさせていただければと思います。まだ第2回目なのに番外編とは何様のつもりかとお叱りを受けそうですが、西堀編集長の格別のお許しをいただきまして、少しくお付き合いをいただければありがたく思います。

まずラオスとは何処にという話からですが、東南アジアの内陸国であり、日本の本州とほぼ同じ面積の国土に約700万弱の人口。国土の過半は山岳地帯であり、周辺をベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーそして中国に囲まれています。国連の定義では世界最貧国の一つと数えられており、いわゆる「後開発途上国」に含まれます。政治的にはラオス人民革命党の一党独裁であり、憲法の中で社会主義及び人民民主主義が唱われていることは中国と同様です(つまり憲法改正をしない限り資本主義には体制変更できない)。

こう書くと何か怖い国のようですが、全くそのようなことはなく、外国テレビも制限無く自由に見られますし、YouTube、Facebook、Twitter等にもアクセスできます。外貨の両替も特に制限がありませんし、後で触れますが外国人も株式投資が可能です。また、試しに「ラオス、独裁、人権」等とセンシティブなキーワードを英語で検索してみましたが、まったく問題なく検索結果が返ってきましたし、その内容も閲覧できました(そして私も無事帰国しています)。また、これも中国とは異なるところですが、少なくともビエンティエンの市内では物乞いを一人も見ませんでした。例えば北京や上海等の大都市でも、人の多く集まる場所(例えば上海の外灘地区)や高級レストラン、外国人向けのレストランの前には未だに物乞いが多くいます。ラオスでは、その豊かな自然環境もあってか、食べる事に困る人は少ないようです。

ラオスの人々は総じて明るく控えめであり、礼儀正しく清潔です。日本人とは相性が良い国かもしれません。ミャンマー(ビルマ)にのめり込んでしまう日本人駐在員のことを俗に「ミャンきち」とか「ビルめろ」(ビルマにメロメロの意味)といいますが、これからはラオスにはまる日本人、「ラオきち」、「ラオめろ」も増えるのではないでしょうか。

ラオス写真

 (ビエンティエンのラーメン屋さん。筆者撮影)

 

以前はフランスの植民地だったこともあり、街の看板も英語とともにフランス語が多く見られました。パンとコーヒーがとても美味しかったのはベトナムと同じようにフランス食文化の遺産かもしれません。同じ経緯から、こちらに居付いてカフェやレストラン、バックパッカー向けのゲストハウスを開業しているフランス人も多いようです。街外れのオープンカフェ(つまり少し豪華な屋台)で、朝からBeer Laoを飲んで、遠い目でメコン川を見ている初老のボヘミアン的フランス人を見ると、カルチェラタンで暴れ回った五月革命のことを懐かしく思い出しているのかなあと、つい余計な想像をしてしまいます。

ラオス写真②

 (メコン川下流方向を望む。筆者撮影)

 

さて、余談はともかく、今回のラオス訪問はビジネス目的ではなく、国連開発計画(UN Development Plan、略称UNDP)、スタンダード・チャータード銀行及びDLA Piperの共同プロジェクトに参加するためでありました。ラオス政府の若手官僚、現地のユネスコ、ユニセフ等の国際機関職員及びNGOに対して、ビジネス交渉、国際訴訟・国際仲裁、専門家責任、専門家倫理規範等について合計4日間の講義を行いました。いわゆるプロボノ活動(pro bono publico、公益慈善活動)でありまして、普段はビジネス弁護士として社会の皆様に多大なご迷惑をかけておりますので、言わばその贖罪として今回の活動に参加した次第です。そして、講演が終わった後の半日の空き時間を利用して、UNDPの方にラオス証券取引所の訪問を設定していただきました。

 

ラオス証券取引所(Lao Securities Exchange、略称LSE)は2010年に開設されたばかりの新しい証券取引所です。証券取引所開設にあたっては韓国取引所(Korea Exchange、略称KRX)が全面的に支援しており、ITシステム等はKRXのものを使用しています。LSEの建物の1階ロビーにはその開設までの経緯を紹介したパネルが設置されていますが(下記写真もそのうちの一枚)、LSEの開設にあたってどれだけ韓国が支援したのかを強調する内容となっています。

ラオス写真③

 

 (ラオス証券取引所開所式典のパネル写真。筆者撮影)

LSEの上場銘柄は2013年11月時点で以下の2銘柄となっています。

BANQUE POUR LE COMMERCE EXTERIEUR LAO PUBLIC (BCEL) EDL GENERATION PUBLIC COMPANY (EDL-Gen)

 

BEELはラオス最大の銀行で、日本との関係では、近年、みずほ銀行及びJCBと業務提携をしています。EDL-Genはラオス国営の電力会社であり、山岳地帯が多いラオスの特徴を生かして水力発電に力を入れています。少し意外なことに、メコン地域三国(ベトナム、カンボジア及びラオス)ではラオスのみが唯一の電力輸出国であり、EDL-Genは余剰電力をベトナム、カンボジア、タイ、さらには中国にまで輸出しています。もっとも、ラオスの都市化、工業化が進むにつれて電力の輸出余力は少なくなっているようです。

裁判所があれば弁護士がいるように、証券取引所があるということは、当然、証券会社もあるわけでして、ラオスでは以下の三社が大手とのことでした(又はこの三社しかないのかもしれません)。

Lanexang Securities Public Company (ブロカレッジ業務) BCEL-KT Securities Company Limited(ブロカレッジ業務) APM (Lao) Securities Company Limited (コーポレート・ファイナンス業務)

なお、日本の個人投資家でも口座開設は簡単にでき、実際にも口座数は年々増えているとの説明でした。

ラオス写真④

 (Lanexang Securities Public Company。筆者撮影)

 

[次回に続く]

 

IPOや財務基盤強化に関するご相談を承ります。

日本ビジネスイノベーションでは、高度な専門性、豊富な実践経験を有するコンサルタントが上場を目指す企業様のベストパートナーとして、IPO支援サービスや財務基盤強化に関する支援サービスをご提供いたします。まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

IPOや財務基盤強化に関するご相談はこちら