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■第十四回■中小ベンチャー企業を対象とした特許料等の軽減措置について【土生特許事務所 弁理士 土生哲也】

2014年04月23日

origin_1486333514-サイズ調整後 弁理士の土生です。前回のコラムから時間が経ってしまい申し訳ありませんでしたが、本日は、最近運用が開始された中小ベンチャー企業を対象とした特許料等の軽減措置についてお知らせします。

 今月から産業競争力強化法に基づく特許料等の軽減措置がスタートして、以下のいずれかに該当する企業は、国内の特許出願に係る費用のうち、審査請求料と特許料が、約3分の1に軽減されることになりました。上場を目指しているベンチャー企業の中には、いずれかの要件に当てはまる企業が少なくないものと思われます。

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 (1) 小規模企業(法人)(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))

 (2) 設立後10年未満で資本金3億円以下の法人

  注)大企業の子会社など支配法人のある企業を除く。

 

 積極的に特許出願を行っている企業は既にご存知の情報であったかもしれませんが、特許出願の経験がない企業にとっては、この軽減措置にどの程度インパクトがあるのか理解しにくいのではないでしょうか。

 特許を出願する際には、特許庁に納付する出願手数料や審査請求料の他に、出願書類の作成や特許庁への手続を代理人(弁理士)に依頼すると、代理人報酬も発生することになります。どの程度の費用が発生するかは、技術分野や発明の内容、作成した書類の分量、企業側でどの程度の作業を負担するか等によって大きく異なりますが、特許庁に納付する費用と代理人報酬を合わせて、標準的なケースであれば出願段階で40~50万円程度、審査を経て特許権が成立するまでで合計100万円前後といった水準になることが多いかと思います。このうち審査請求料が15万円前後とすると、軽減額は約10万円。この試算で、特許権取得までに要する費用総額のうち、10%くらいが軽減されるイメージになります。

 尚、特許料については、通常は当初3年分を納付して1万円前後になることが多いですが、これだと軽減の効果はほとんどありません。但し、当初から10年分をまとめて納付すると20万円超になることもあり、長期的に維持したい権利であれば、3年分に限らずまとめて納付することによってそれなりのメリットが得られる場合があります。

 

 以上のように、特許権取得までの費用総額に対する影響を考えると、「この制度ができたから特許を出願しよう」というほどのインセンティブは生じにくい印象ですが、スタートアップの企業は少しでも支出は抑えたいところなので、特許取得が必要な際にはこの軽減措置を利用しない手はありません。また、代理人に依頼せず自社内で手続を行っている企業や、出願件数が多い企業であれば、より大きなメリットが生じることになりますので、対象となりそうな企業の皆様には、

http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen.htm

を確認しておくことをお勧めします。

 

 もっとも、こうした特許権取得に要する費用を高いとみるか安いとみるかは、絶対額だけで判断できるものではありません。重要なことは、費用に見合った効果が得られるかどうか。そのためには、特許権等の知的財産権を取得することによって得られる効果をよく理解しておきたいところですが、その点については回を改めて解説したいと思います。

 

 土生特許事務所 弁理士 土生哲也

 

 

 

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