LET'S IPO

JBI Inc.

■第三回■Let’s 海外上場 (1)【DLA Piper 東京オフィス パートナー 弁護士 石川耕治】

2013年09月30日

origin_271942020-3弁護士の石川と申します。ディーエルエイ・パイパー(www.dlapiper.com)という、いわゆる国際法律事務所の東京オフィスに勤務しています。ご指名により本コラムを担当させていただくことになりました。しばらくのお付き合いをお願い申し上げます。

 

私は日本企業の海外上場を主業務としています。素晴らしい技術やアイディアを持つベンチャー企業や中堅企業、果敢に世界に打って出ようという経営者(老いも若きも男も特に美しい女性も)を応援したいと思っています。

 

しかしよく考えると、落ち込んだとはいえ日本は世界第三位の経済大国であり、日本の資本市場はアメリカに次いで世界第二位の規模を誇っています。アジアに赴いて仕事をすると日本の存在感は依然として圧倒的であり、日本企業や日本ブランドに対する信頼も増すことはあっても減じていないことが分かります。アジア各地のセミナーで、「ぜひ当地の優良企業に日本で上場やM&Aをしてほしい」と話すと、たいてい、「まさか自分たちのような発展途上国の企業が日本で資金調達するとか、ましてや日本企業を買収するとか、そんなことができるとは思わなかったし、考えてもみなかった」という反応が返ってきます。

 

このような恵まれた環境にある日本企業が、なぜ資本市場がより小さい国で上場するのか。自国の資本市場が十分に発達していない発展途上国の企業や、中国のように外資規制が厳しい国の企業が、アメリカや香港、イギリスで上場することは理解できます。しかし発展したところから未発展のところへ、大から小へと向かうのは何かそれなりの理由がなければなりません。企業は自国市場で上場することが原則ですし、ほとんどの場合それが最善の選択でもあるからです。

 

「香港は中国本土へのゲートウエーだから」といって香港で上場をする。「シンガポールは東南アジアのハブだから」といってシンガポールに上場する。なにか新聞やビジネス雑誌の見出しそのままのようですが、それ自体は立派な見識ですし間違ってはいない。しかし如何せん抽象的にすぎる。「世界に平和を」と言うのと同じくらい反論する余地も説得力もありません。

 

香港上場やシンガポール上場、最近ではナスダック上場もありますが、その成功例を見ますと、その会社が、特に経営陣が、「なぜ海外上場なのか」という理由付けを非常に具体的な、ミクロのレベルまで落とし込んで、自らの血肉となるくらいまで徹底的に考え抜いた末で決断していたことが分かります。「企業は自国で上場することが最善」という原則に逆らうには、それなりの調査研究、勇気と覚悟(とお金)が必要です。

 

次回は海外上場成功のための秘訣、「成功のトライアングル」についてご説明したいと思います。

 

DLA Piper 東京オフィス パートナー 弁護士 石川耕治

 

IPOや財務基盤強化に関するご相談を承ります。

日本ビジネスイノベーションでは、高度な専門性、豊富な実践経験を有するコンサルタントが上場を目指す企業様のベストパートナーとして、IPO支援サービスや財務基盤強化に関する支援サービスをご提供いたします。まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

IPOや財務基盤強化に関するご相談はこちら